ケィオスの時系列解析メモランダム

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【DFA・DMAの基礎】ランダムウォーク解析:拡散過程の統計

Detrended Fluctuation Analysis(DFA)や Detrending Moving Average analysis(DMA)は、時系列データを増分としたランダムウォークが、時間の経過とともにどの程度広がっていくかを評価しています。つまり、DFA や DMA では、まず元の時系列を累積和(積分時系列)として表し、ランダムウォークのような軌道に変換します。この軌道は、時間とともに正負に変動しながら進みますが、単一の試行だけを見ると、その動きに広がりをみることは難しいかもしれません。しかし、多数の試行を考え、ある時刻を固定して軌道の位置を集めると、値は平均を中心とした分布を形成し、その分布の広がりは時間が進むにつれて大きくなっていきます。
 ここで重要なのは、軌道の平均値ではなく、そのばらつきの大きさです。時間が長くなるほど、軌道が取りうる位置の範囲は広がっていきます。この「広がり方の速さ」こそが、拡散過程の本質的な特徴です。DFA や DMA は、この広がりを時間スケールごとに評価し、どの程度の速さで拡散が進んでいるかを定量化します。
 下の図では、時刻0で原点から出発した「ランダムウォーク」のサンプルパスを複数重ねて描いています。一本のサンプルパスでは、必ずしも軌道が拡散的であることは見えてきませんが、たくさんのサンプルを重ねれば見れば、時間が経過するほど、軌道は統計的に広がっている(拡散している)ことがわかります。

ブラウン運動(ランダムウォーク)のサンプルパス
 下の図はさらにサンプルパスの数を増やし、時間とともに x[n] の分布が広がる様子を描いています。もし、観測時系列  u [i] が無相関であれば、その積分時系列

\displaystyle{
x[n]=\sum_{k=1}^n u[k]
}

はブラウン運動と同様の拡散を示します。そして、観測時系列が正規分布(ガウス分布)に従わない場合でも、それが独立同分布過程であれば、ある程度時間が経過すれば、x[n] の分布は正規分布で近似できるようになります。

ブラウン運動(ランダムウォーク)の軌道の拡散
 上の図下段の分布の広がりを評価する統計量を考えれば、軌道の拡散の程度を評価できます。DFAやDMAでは、そのための統計量として2乗平均の平方根(標準偏差のようなもの)を使っているのです。分布の広がりは、2乗平均以外でも、平均からの絶対偏差の平均、高次の中心モーメントでも可能です。たとえば、Higuchiのフラクタル次元(HFD)の推定では、絶対偏差の平均により、拡散の程度を評価しているということです。  DFA、DMA、HFDでは、上の図で示した拡散的性質がないと時系列の特徴を正しく評価できないことに注意してください。つまり、観測時系列が拡散的でないときは、積分時系列に変換する必要があるのです。

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