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【私のチの冒険】体格指標BMIの成功と挫折、そして再生(4):大人と子どもの決定的な違い

 成人のBMIには、生物としてのヒトのデザインを映し出す、驚くほど美しい法則が潜んでいます。それは、下の図に描いたように、「身長がどれほど異なっていても、BMI分布の形が常に同じである」という法則でした。数理的に言えば、身長が与えられたときのBMI確率密度関数、すなわち条件付き分布が、身長に依存せず不変であるという事実です。

18歳男性の身長階層別の体重分布(左)とBMI分布(右)。データは実際の身長・体重データの特性を再現する数理モデルを用いて生成。

 3年前、私がこのことを自らの分析によって初めて知ったとき、鳥肌が立つほどの感動を覚えました。この結果を誰がどう評価するかに関係なく、私の中では、この「人間という存在を支配する不変の構造」は、「美しい」法則です。

 ただし、この記事の本題は大人ではなく、子どもの体格評価です。ここでまず、私が主張したいのは、BMIが「身長調整済み体格評価指標」であることを裏づける根拠について、従来の「身長とほとんど相関しない」という説明を改めるべきだということです。より正確な理解はこうです――「成人のBMIは、身長に依存せず不変の構造をもつ」ゆえに、「BMIは身長調整済み体格評価指標として真に有効である」ということなのです。

子どものBMI分布に不変性はない

 BMI、すなわち体格評価指標の「不変性」に注目すると、大人と子どもの違いはたちどころに浮かび上がります。そこから、骨成熟が途上にある子どもにおいて、なぜBMIが体格評価の指標として適切でないのかを、明確に説明できます。そしてその先には、子どもの体格成長を理解するための鍵となる問題――私たちが真剣に取り組むべき価値のある問題――が、はっきりと姿を現すのです。

 下の図は、11歳の男性について、身長階層別のBMI分布、(体重)÷(身長の \displaystyle{
p
} 乗)型の指標の分布を示したものです。まず、子どもの結果である下図上段の2つの図と、上に示した大人の結果を見比べてください。大人でも子どもでも、身長が高くなるにつれて体重分布は右側(重い方)へシフトするのは当然のことです。ところが、骨成熟が完了した直後の成人では、BMIの分布(上図右)は身長に依存せず、ほぼ同じ形を保っています。それに対して、骨格が大きく成長している子どもでは、下図右上に示すように、BMIの分布形が身長に強く依存して大きく変形してしまうのです。図中のマークは、丸印が各身長階層における体重の2%点、三角印が50%点(中央値)、ダイヤ印が98%点を示しています。もし2%点や98%点の位置が一致せずに大きな広がりをもっているなら、それは「体形の珍しさ=出現確率」という意味で、肥満や痩せを客観的に評価できていないことを意味しています。

11歳男性の身長階層別の体重分布(左上)とBMI分布(右上)。加えて、下段に指数pの値を2.5にした指標分布(左下)と3.0にした指標分布(右下)を描いた。データは実際の身長・体重データの特性を再現する数理モデルを用いて生成。

 では、BMIを改良して、(体重)÷(身長の \displaystyle{
p
} 乗)型の新たな体格指標を使えばどうなるでしょうか。上図下段は、\displaystyle{
p=2.5
}(左下)と、\displaystyle{
p=3.0
}(右下)の結果を示しています。これらの例からわかるのは、成長期の子どもにおいては、どれほど pの値を調整しても、体格指標の分布が身長に依存しない「共通の形」になることはない、という事実です。

 身長と体重を用いて成長期の子どもの体形を評価しようとすると、(体重)÷(身長の \displaystyle{
p
} 乗)型の体格指標には、どうしても越えられない限界があるのです。では、「ではどのような方法なら妥当なのか」と疑問を持たれるかもしれません。しかし私は、体格評価の指標そのものの議論からいったん離れ、むしろ子どもの身長と体重の関係をより詳しく理解することに焦点を当てたいと思います。次からは、その関係を数式を用いて掘り下げていくことにしましょう。

(つづく)