ケィオスの時系列解析メモランダム

時系列解析、生体情報解析などをやわらかく語ります

2026-01-01から1年間の記事一覧

【Rでブラインド音源分離】Second-Order Blind Identification(SOBI)入門

複数のセンサで観測した信号が、実は複数の独立した「音源」の混合であった、という状況は、信号処理の分野ではよく見られます。そのような問題は ブラインド音源分離(Blind Source Separation, BSS) と呼ばれます。 BSS の代表的な手法としては ICA(Inde…

【Rで瞬時周波数推定】Savitzky–Golay微分フィルタを用いたTeager–Kaiser Energy Methodの改善策

瞬時周波数や振幅を同時に推定できる TKEO(Teager–Kaiser Energy Operator) は、振幅変調・周波数変調(AM–FM)信号解析の古典的な手法です。しかし、実データへの適用を考えると、従来の TKEO 法には明確な問題があります。ごくわずかな加法ノイズが含ま…

【Rで瞬時周波数推定】意外と単純 Teager–Kaiser Energy Method:ヒルベルト変換じゃないよ

振動する時系列信号を解析するとき、私たちはしばしば「この信号は、いまどれくらいの強さで振動しているのか」「振動の速さは時間とともにどう変わっているのか」といった問いを立てます。Teager–Kaiser energy operator(TKEO)は、まさにそのような問いに…

【Rで波素分析】ARパワースペクトルを1次と2次のAR成分に分解してみる

以前説明した「自己回帰 (AR)パワースペクトルの分解:波素分析」(詳細は以下のリンク参照) 自己回帰 (AR)パワースペクトルの分解:波素分析 - ケィオスの時系列解析メモランダム をRで実際にやってみようという記事です。ARスペクトル分解(波素分析)は…

【Cで高速DMA】長いデータでは畳み込みDMAアルゴリズムは遅すぎる:高速アルゴリズムで解決

今回はC言語プログラムを使って、DMA(Detrending Moving Average Analysis)の高速アルゴリズムの処理速度が如何に速いかを見てみます。素朴に Savitzky-Golay フィルタの畳み込みを計算をする DMA アルゴリズムと、我々のグループが提案している高速DMAア…

【Cで高速DMA】長時間相関解析で、みんなに使ってほしい

時系列の長時間相関(スケーリング)を調べるとき、トレンド除去を含む detrended moving-average analysis (DMA) は、DFA の次に良く使われている手法です。実は、DMAには、DFAよりも優れた部分が複数あり、上位互換と言える方法です。しかし、知名度(主に…

【RでDMA】高速アルゴリズム [PHYSICAL REVIEW E 93, 053304 (2016)]

長時間相関(long-range correlation)や 1/f スケーリングの解析では、トレンドを含む非定常時系列から「本来のゆらぎ」を取り出すために、Detrended Fluctuation Analysis(DFA) や Detrended Moving Average Algorithm (DMA) のような、トレンドからの偏…

【時系列解析の基礎】「弱定常性」「線形性」「ガウス性」は同じ?似ている?それとも別物?

時系列解析の入門書や講義、あるいは時系列解析に関連した論文では、弱定常性(weak stationarity)、線形性(linearity)、ガウス性(Gaussianity)といった言葉が頻繁に登場します。しかし、時系列解析の応用がさまざまな分野へと広がるにつれて、これらの…

【時系列解析の基礎】「弱定常」中心主義:「実世界の要請」ではなく「数学的理想化」

時系列解析のほとんどの教科書では、「弱定常(weak stationarity、weak-sense stationarity)」という概念が、解析の前提条件として導入されます。この前提を理解することは、理論的枠組みを整理し、数理的な議論を追ううえでは確かに有用です。しかし、実…

【Rで統計】R で ANOVA(分散分析)への最短ルート

ANOVA(分散分析)は、複数グループの平均に差があるかどうかを一度に判定するための手法です。本来は前提条件や理論的背景を理解した上で使うべき解析ですが、ここではそれを一切扱いません。 この解説の目的はただ一つです。「最短手順で、解析結果を出す…

【Rで統計】ANOVAでは帰無仮説が正しくても有意差は出現する:p値だけでなく効果量を見る

統計検定を使う全員に知っておいてほしいこと、それは帰無仮説が正しい、あるいは、群間に差がないとき、p値は一様分布に従うということです。これは直感に反するかもしれませんが、非常に重要な性質です。つまり、本当はまったく差がなくても、p値が0.999に…

【Rで統計】分散分析ANOVAの考え方:データのばらつきの要因の分解

実験や観測データの解析では「複数の群(グループ)の平均値に差があるか」 を知りたいことが頻繁にあります。たとえば、 3 種類の薬 A、B、C の効果の違い 複数条件下での生理指標の差 学年・群・処理条件ごとの測定値の比較 などです。 そのような多群比較…

【Rで非ガウス統計5】間欠性ゆらぎと局所和の正規分布への遅い収束:多重スケール確率分布解析(その2)

今回から、間欠性(Intermittency)、あるいは 分散不均一性(Heteroscedasticity) と呼ばれる性質をもつ非ガウス時系列を対象に、多重スケール確率分布解析を用いて評価する実務的な方法を解説していきます。 ここで扱う時系列は、対数正規カスケード過程…

【科学の言葉を知る7】バタフライエフェクト:現象の名前としての「カオス」

「ティラノサウルスは決まったパターンやスケジュールには従わない。そこにカオスの本質がある。」 —映画 Jurassic Park(1993)で、数学者イアン・マルコム博士(Ian Malcolm)は、そう断言します。彼は、手の甲に垂らした水滴が、落とすたびに流れ落ちる方…

【Rで線形混合モデル3】なぜ個人差を考慮する必要があるのか

生体信号解析、心理実験、行動データ、教育データなど、同じ実験対象者から複数回の測定を行った結果のデータは多くの分野で扱われています。そのようなデータに対して「実験対象者間の個人差はとりあえず無視して、全部まとめて回帰してみよう」と考えるか…

【Rで非ガウス統計4】間欠性 (Intermittency)と分散不均一性 (Heteroscedasticity):多重スケール確率分布解析(その1)

私たちは日常の中で、「変化の少ない期間が続いたかと思うと、突然、大きな変動が立て続けに起こる」という経験をすることがあります。静かな天気が続いていたのに、急に激しい嵐に見舞われることもあれば、株式市場が落ち着いていると思っていた矢先に、あ…

【Rで非ガウス統計3】相乗対数正規モデルのパラメタ推定:モーメント法

乱流、株式指標、心拍ゆらぎなどの時系列では、その確率分布が正規分布に比べて裾の厚い非ガウス性を示すことがよくあります。今回は、そのような非ガウス分布を記述するモデルとして、Castaing が発達乱流の記述のために提案した相乗対数正規モデルを導入し…